こんにちは。愛知県刈谷市の歯医者、やまむら総合歯科矯正歯科 歯科医師 院長の山村昌弘です。
むし歯の治療が進み、いよいよ詰め物や被せ物を入れる段階になった時、「銀歯にしますか?それとも白い歯にしますか?」と聞かれて迷ってしまった経験はありませんか。
一昔前までは、奥歯の治療といえば銀歯が当たり前でしたが、現在は材料や技術の進化により、選択肢が大幅に増えています。毎日使う歯のことですから、見た目の美しさはもちろん気になりますが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に大切なのが「耐久性(長持ちするか)」や「体への影響」です。
今回は、それぞれの素材が持つメリットとデメリットを比較し、患者様が後悔しない選択をするための判断基準についてお話しします。また、最近よくご質問いただく「奥歯でも保険で白くできるのか」という点についても詳しく解説します。
目次
- 丈夫さならピカイチ?銀歯(保険の金属)のメリット・デメリット
- 白い歯の選択肢は2つ。保険の「レジン」と自費の「セラミック」
- 質問回答:前歯ではなく奥歯でも白い詰め物は保険でできますか?
- 結局どっちがいい?選び方のポイント
- まとめ
1. 丈夫さならピカイチ?銀歯(保険の金属)のメリット・デメリット
まず、日本の保険診療で長年使われてきた、いわゆる銀歯(金銀パラジウム合金)についてです。
メリットは、何と言っても「強度」です。金属なので、噛む力が強くかかる奥歯に使っても割れることはまずありません。また、保険適用のため費用が安く抑えられる点も大きな魅力です。
一方で、デメリットも少なくありません。最大の問題はやはり「見た目」です。お口を開けた時に銀色が目立ってしまうため、コンプレックスに感じる方が多いです。 また、健康面でのリスクもあります。長年使用していると、金属イオンが溶け出して体内に蓄積され、金属アレルギーを引き起こす可能性があります。さらに、銀歯はセメントで接着していますが、経年劣化でセメントが溶けたり、金属が変形したりすることで隙間ができやすく、そこから細菌が入って再びむし歯になる(二次カリエス)リスクが高いという弱点があります。
2. 白い歯の選択肢は2つ。保険の「レジン」と自費の「セラミック」
次に、白い詰め物・被せ物についてです。これには大きく分けて、保険適用の「レジン(プラスチック)」系と、自費診療の「セラミック(陶器)」系の2種類があります。
保険のレジン(コンポジットレジンやCAD/CAM冠) プラスチック素材を含んでいるため、保険で安く白くできるのがメリットです。しかし、金属やセラミックに比べると強度が低く、長期間使用していると変色(黄ばみ)したり、すり減ったり、割れたりすることがあります。また、表面に傷がつきやすく、汚れ(プラーク)が溜まりやすいという性質もあります。
自費のセラミック・ジルコニア 陶器と同じ素材、あるいは人工ダイヤモンドと呼ばれる素材で作られています。天然の歯のような透明感と美しさを再現でき、変色もしません。表面がツルツルしているため汚れが付きにくく、歯と化学的に接着するため隙間ができにくく、二次むし歯のリスクが低いのが大きな特徴です。金属アレルギーの心配もありません。ただし、費用は高額になります。
3. 質問回答:前歯ではなく奥歯でも白い詰め物は保険でできますか?
「前歯ではなく奥歯でも白い詰め物は保険でできますか?」というご質問ですが、結論から申し上げますと、現在は条件付きで「可能」です。
小さなむし歯の場合 「コンポジットレジン」というペースト状の白いプラスチックを詰める治療は、前歯・奥歯に関わらず保険適用で可能です。
被せ物(クラウン)の場合 以前は奥歯の被せ物は銀歯しか保険が効きませんでしたが、現在は「CAD/CAM冠(キャドキャムかん)」という、ハイブリッドレジン(プラスチックとセラミックを混ぜたもの)のブロックを削り出して作る白い被せ物が、多くの歯で保険適用になっています。 小臼歯(前歯と奥歯の間の歯)は基本的に適用可能です。大臼歯(一番奥の歯)に関しても、金属アレルギーの診断がある方や、上下左右の親知らずを除く全ての歯が揃っていて噛み合わせに問題がない場合など、条件を満たせば保険で白くすることができます。
ただし、CAD/CAM冠はあくまでプラスチックベースの素材ですので、金属やセラミックに比べると割れやすいというリスクがあることは理解しておく必要があります。特に歯ぎしりをする方や、噛む力が非常に強い方にはお勧めできない場合があります。
4. 結局どっちがいい?選び方のポイント
では、最終的に何を基準に選べば良いのでしょうか。
耐久性と二次むし歯予防を最優先するなら 自費の「セラミック」や「ジルコニア」、あるいは見た目を気にしないなら適合精度の高い「ゴールド(金合金)」が最適です。初期費用はかかりますが、やり直しのリスクが低いため、長い目で見れば歯を守ることにつながります。
とにかく費用を抑えたいなら 保険の「銀歯」または「CAD/CAM冠」になります。力仕事やスポーツをしていて食いしばる癖がある方は、割れるリスクのある白いCAD/CAM冠よりも、割れない銀歯の方が安心な場合もあります。
見た目と費用のバランスを取りたいなら 目立つ場所だけ白くして、見えない一番奥は銀歯にする、といった使い分けも可能です。
まとめ
銀歯と白い詰め物の比較について解説しました。
- 銀歯は安くて丈夫だが、見た目が悪く、金属アレルギーや再発のリスクがある。
- 白い歯には保険のレジン(プラスチック)と自費のセラミックがある。
- 奥歯でも、条件を満たせば「CAD/CAM冠」という白い被せ物が保険で作れる。
- ただし、保険の白い歯は強度が低いため、割れるリスクがある。
- 美しさ、耐久性、体の健康を総合的に考えるならセラミックが推奨される。
どの素材にも一長一短があります。ご自身のライフスタイルや価値観、そしてお口の状態(噛む力やむし歯の大きさ)に合わせて、最適なものを選ぶことが大切です。
愛知県刈谷市のやまむら総合歯科矯正歯科では、それぞれの素材のサンプルやメリット・デメリットを分かりやすくご説明し、患者様が納得して選べるようサポートさせていただきます。迷われている方は、ぜひお気軽にご相談ください。