こんにちは。愛知県刈谷市の歯医者、やまむら総合歯科矯正歯科 歯科医師 院長の山村昌弘です。
お子様の歯磨きについて、多くの親御さんが抱える悩みの一つが「仕上げ磨きはいつ卒業すればいいのか」という問題です。毎日のことですから、お子様が成長するにつれて「もう自分で磨けるんじゃない?」「いつまで親がやるの?」と疑問に思うのは当然のことです。
特に、矯正治療を検討されている方や、すでに始めている方にとっては、この問題はさらに重要になります。矯正装置がつくと、お口の中の環境は一変し、むし歯のリスクが格段に上がるからです。
今回は、一般的な仕上げ磨きの卒業時期の目安と、矯正治療中における親御さんの役割、そして小学校3年生以降の関わり方について解説します。
まず、矯正をしていない一般的なケースでの目安をお話しします。歯科医師として推奨しているのは、小学校中学年(9歳〜10歳)までは必須、できれば小学校卒業(12歳頃)まで続けていただきたい、ということです。
なぜこれほど長く必要なのでしょうか。理由は大きく分けて2つあります。
一つ目は、手先の器用さの問題です。歯ブラシを細かく動かし、奥歯の裏側や歯と歯の間まで完璧に磨く技術は、大人が思っている以上に難しいものです。一般的に、歯磨きに必要な手先の器用さが整うのは10歳前後と言われています。
二つ目は、混合歯列期(乳歯と永久歯が混ざっている時期)の複雑さです。小学生の時期は、背の低い生えたての永久歯と、背の高い乳歯が混在し、段差ができています。また、生えたての永久歯(幼若永久歯)は酸に弱く、非常にむし歯になりやすい状態です。このデコボコした時期こそ、大人の目と手によるケアが必要不可欠なのです。
「小3(8〜9歳)以降も必要ですか?」というご質問ですが、答えは「イエス(必要)」です。
小学校3年生前後は、自分でお風呂に入ったり、明日の学校の準備をしたりと、身の回りのことができるようになる時期です。そのため、歯磨きも任せたくなる気持ちはよく分かります。
しかし、歯科的な視点で見ると、この時期はお口の中の環境が大きく変化する重要な時期でもあります。特に、奥歯(第一大臼歯)や前歯の生え変わりが進むため、汚れが溜まりやすく、本人だけでは磨き残しが多発します。
本人に磨かせる習慣をつけることは大切ですが、夜寝る前の1回だけは、親御さんが仕上げ磨き、あるいは「磨き残しのチェック」をしてあげる必要があります。完全に手放すには、まだ少し早すぎるとお考えください。
もしお子様が矯正治療中であれば、話は別です。年齢や学年に関わらず、親御さんのサポートが必須となります。たとえ中学生であっても、時々はチェックしてあげてほしいくらいです。
矯正装置(ワイヤーやブラケット、拡大床など)が入ると、お口の中は複雑な迷路のようになります。食べカスが装置に挟まりやすくなり、歯ブラシも届きにくくなります。
矯正装置がついた状態での歯磨きは、大人でも難しいものです。それをお子様一人に任せてしまうのは、むし歯を作ってくださいと言っているようなものです。
せっかく歯並びをきれいにしているのに、装置を外したら歯がむし歯だらけだった、ということになっては本末転倒です。矯正中は「特別な期間」と割り切り、親子二人三脚でむし歯予防に取り組んでください。
とはいえ、高学年になると親に口の中を見られるのを嫌がるお子様も増えてきます。その場合は、関わり方を少し変えてみましょう。
膝枕で磨くスタイルを卒業し、洗面所で立って行う 本人が磨いた後に、親御さんが明るい場所でライトなどを当てて口の中を見ます。「奥歯に少し残っているよ」「ここだけママがやるね」と、ポイントを絞って手助けをします。
染め出し液を活用する 週に1回程度、プラークが赤く染まる「染め出し液」を使って、どこが磨けていないかを本人に自覚させます。視覚的に汚れが見えれば、お子様も納得して磨き直したり、仕上げ磨きを受け入れたりしやすくなります。
フッ素洗口液の使用 歯磨きだけでなく、フッ素入りのうがい薬などを併用し、化学的な力で歯を強くするのも有効な手段です。
仕上げ磨きの時期と矯正中のケアについて解説しました。
仕上げ磨きは、親子のコミュニケーションの時間でもあります。嫌がる時期もあるかと思いますが、大切なお子様の歯を守るために、形を変えながら継続していきましょう。
愛知県刈谷市のやまむら総合歯科矯正歯科では、お子様の年齢や矯正装置に合わせたブラッシング指導を行っています。お家でのケアに限界を感じたら、プロの力も頼ってください。