2025.09.04
銀歯と白い詰め物、どっちがいい?歯科医が徹底比較!見た目・耐久性・費用まで解説
こんにちは。愛知県刈谷市の歯医者、やまむら総合歯科矯正歯科 院長の山村 昌弘です。日々の診療の中で、患者様から最も多くいただくご質問の一つが、むし歯治療の際の「詰め物(インレー)」や「被せ物(クラウン)」の材質についてです。特に、奥歯の治療では、このようなご相談をよくお受けします。
「先生、むし歯を削った後って、銀歯と白い詰め物、どっちがいいんでしょうか?」 「銀歯は目立つから嫌だけど、白いのは割れやすいって聞きました…」 「結局、費用や長持ちの面で、どちらを選ぶべきか悩んでいます。」
確かに、保険適用の「銀歯」は、昔からあるスタンダードな治療法ですが、見た目が気になるという大きなデメリットがあります。一方で、「白い詰め物」にも、保険適用のものと適用外(自費診療)のものがあり、それぞれに強度や美しさ、費用が異なります。
一つの正解があるわけではなく、治療する歯の場所、むし歯の大きさ、患者様の噛み合わせの強さ、そして何より「患者様ご自身が何を優先されるか(見た目、費用、耐久性など)」によって、最適な選択は変わってきます。今回は、この悩ましい選択について、それぞれの材質のメリットとデメリットを、専門家の立場から詳しく、そして分かりやすく比較・解説していきます。
目次
- そもそも「銀歯」と「白い詰め物」とは?主な種類を解説
- 徹底比較①:見た目(審美性)と、お口の印象への影響
- 徹底比較②:耐久性(寿命)と割れるリスク
- 徹底比較③:歯への優しさ(適合性・虫歯の再発リスク・アレルギー)
- 徹底比較④:費用(保険適用と自費診療)と、長期的なコストパフォーマンス
- まとめ:あなたにとっての「ベストな選択」とは
1. そもそも「銀歯」と「白い詰め物」とは?主な種類を解説
「銀歯」と「白い詰め物」、この二つの選択肢には、具体的にどのような種類があるのでしょうか。まず、その基本的な分類からご説明します。
- 「銀歯」(保険適用) 一般的に「銀歯」と呼ばれるものは、歯科専門用語では「金銀パラジウム合金」という金属を用いて作られた、詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)のことを指します。これは日本の健康保険制度で認められている材料で、数十年の長い歴史があり、主に奥歯の治療で広く用いられてきました。最大のメリットは、金属であるための「強度(耐久性)」と、「保険適用で安価」である点です。しかし、その名の通り「銀色」であるため、見た目が目立つという大きなデメリットがあります。
- 「白い詰め物」 こちらは、大きく分けて2種類あります。
- コンポジットレジン(CR)(保険適用 ※条件あり) これは、歯科用の「白いプラスチック」です。ペースト状の材料を、むし歯を削った穴に直接詰め、特殊な光を当てて固めます。比較的小さなむし歯や、前歯の治療で多く用いられます。最大のメリットは、「保険適用で白くできる」ことと、歯を削る量を最小限に抑えられ、「1日で治療が終わる」点です。しかし、プラスチックであるため、強度や耐久性は金属やセラミックに劣り、長期間の使用で変色(黄ばみ)しやすいというデメリットがあります。奥歯の広い範囲や、噛む力が強くかかる部分には、適用が難しい場合もあります。
- セラミック(保険適用外・自費診療) いわゆる「陶材」です。歯科医院で型取りをした後、歯科技工所でオーダーメイドで作製される、詰め物(セラミックインレー)や被せ物(セラミッククラウン)です。最大のメリットは、天然の歯と見分けがつかないほどの、圧倒的な「審美性(美しさ)」と、「長期的な色の安定性」です。また、汚れ(プラーク)が付着しにくく、適合性も高いため、むし歯の再発リスクも低いとされています。デメリットは、「保険適用外のため高額」であることと、陶器であるため、非常に強い力が一点にかかると稀に「割れる(欠ける)」リスクがある点です(近年は、ジルコニアなど、ダイヤモンドに匹敵する強度を持つセラミックも登場しています)。
このように、一口に「白い詰め物」と言っても、保険適用の「コンポジットレジン」と、自費診療の「セラミック」では、性質も費用も全く異なるのです。
2. 徹底比較①:見た目(審美性)と、お口の印象への影響
治療の選択において、「見た目(審美性)」は、患者様の精神的な満足度を左右する、非常に重要な要素です。
- 銀歯(金銀パラジウム合金) 審美性においては、最大のデメリットとなります。お口を開けた時に、奥歯であっても銀色の金属がキラリと光ることは、多くの方にとってコンプレックスの原因となり得ます。「人前で口を開けて笑うことに抵抗がある」「会話中に口元を手で隠してしまう」という方も少なくありません。特に、下の奥歯は、ご自身が思っている以上に、会話の相手からは見えやすいものです。 さらに、長年お口の中にあると、金属イオンが溶け出して、歯茎が黒ずんでしまう「メタルタトゥー」という現象を引き起こす可能性もあります。これは、一度できてしまうと、除去するのが非常に困難です。
- コンポジットレジン 保険適用でありながら、非常に高い審美性を持っています。様々な歯の色に合わせたプラスチックがあるため、ご自身の天然歯の色と、ほとんど見分けがつかないように詰めることが可能です。治療したその日から、白い歯で帰宅できるという精神的なメリットは非常に大きいでしょう。ただし、先述の通り、これはプラスチック(樹脂)です。吸水性があるため、長年の使用で、コーヒー、紅茶、カレーなどの色素を吸収し、徐々に変色(黄ばみ)してくる可能性があります。
- セラミック 審美性においては、現存する歯科材料の中で、最も優れています。 陶材であるため、天然歯が持つ、あの独特の「透明感」や「光沢」、そして「微妙な色のグラデーション」まで、忠実に再現することが可能です。材質自体が、水分や色素をほとんど吸収しないため、変色もほぼ起こらず、長期間にわたって、治療直後の美しい状態を維持することができます。審美性を最優先に考える方にとっては、間違いなく、最も満足度の高い選択肢となります。
3. 徹底比較②:耐久性(寿命)と割れるリスク
「せっかく治療した歯、できるだけ長持ちさせたい」というのは、誰もが願うことです。それぞれの耐久性(寿命)と、破損のリスクについて比較します。
- 銀歯(金銀パラジウム合金) 金属であるため、材質そのものの強度は非常に高いです。強い力がかかる奥歯でも、銀歯そのものが割れたり、欠けたりするリスクは、まずありません。これが、長年にわたり奥歯の治療で使われ続けてきた最大の理由です。 しかし、注意点もあります。銀歯は「硬すぎる」ため、噛み合う相手の天然歯(対合歯)を、過度にすり減らしてしまう(摩耗させる)可能性があります。また、銀歯そのものは割れませんが、硬すぎるがゆえに、噛み合わせた時の力が、ご自身の歯の根っこ(歯根)に集中し、稀に、歯の根が割れてしまう(歯根破折)リスクを高める、という側面も指摘されています。
- コンポジットレジン プラスチックであるため、耐久性は金属やセラミックに比べて劣ります。 噛む力が強くかかる奥歯の広範囲な治療では、長年の使用で「すり減り(摩耗)」が起こりやすいです。また、強い力がかかると、欠けたり、割れたり、あるいは詰め物ごと脱離してしまったりするリスクも、銀歯やセラミックよりは高くなります。そのため、適用できるむし歯の大きさや、部位には限界があります。
- セラミック 現在の歯科用セラミック(特にジルコニアなど)は、非常に高い強度と耐久性を誇ります。「陶器だから割れやすい」というのは、一昔前のイメージになりつつあります。天然歯と同等か、それ以上の硬さを持ち、すり減りにも非常に強いです。ただし、陶器の性質上、硬い氷をガリっと噛むなど、想定外の強い衝撃が、ごく狭い範囲にピンポイントで加わると、**「欠ける(チッピング)」**リスクはゼロではありません。しかし、これはセラミックに限った話ではなく、天然歯でも起こり得ることです。
一般的な平均寿命の目安としては、お口のケアの状態や噛み合わせにもよりますが、銀歯で5~8年、コンポジットレジンで3~5年(場所による)、セラミックで10年以上、と言われることが多いです。
4. 徹底比較③:歯への優しさ(適合性・虫歯の再発リスク・アレルギー)
治療の優劣は、耐久性だけでは決まりません。「歯と、どれだけピッタリとくっついているか」「将来、再びむし歯になりにくく、歯に優しいか」という視点も、非常に重要です。
- 銀歯(金銀パラジウム合金) 銀歯は、型取りをして作製した後、「セメント」という接着剤で歯にくっつけます。金属は、温度変化でわずかに膨張・収縮する性質があり、歯との間に微細な隙間が元々存在します。また、このセメントも、唾液によって長年経つと、少しずつ溶け出してしまいます。 すると、その隙間から細菌が侵入し、銀歯の下で、気づかないうちに、再びむし歯が進行する(=二次カリエス)という、最悪の事態を招くリスクが、他の材質に比べて高いことが知られています。 また、金属であるため、金属アレルギーの原因となる可能性もゼロではありません。
- コンポジットレジン 歯を削った部分に、直接、強力な接着剤を介して盛り付け、歯と一体化させます。銀歯のように、型取りやセメントのステップが不要で、歯と化学的に強固に接着します。また、むし歯の部分だけをピンポイントで削り、詰めることができるため、歯を削る量を最小限に抑えられる(MI:ミニマルインターベンション)という、歯に最も優しい治療法の一つです。非金属なので、アレルギーの心配もありません。 ただし、プラスチックは固まる際にわずかに「収縮」する性質があり、その境目から将来的に二次カリエスになるリスクも、もちろん存在します。
- セラミック 精密な型取り(あるいは、当院のようなデジタルスキャナー)に基づいて作製され、レジン系の強力な「接着性セメント」を用いて、歯と化学的に一体化させます。銀歯のセメントと異なり、唾液に溶け出すことがほとんどなく、適合性が極めて高いため、細菌が侵入する隙間がほとんど生まれません。また、セラミックの表面は、陶器のお皿のようにツルツルしており、汚れ(プラーク)が付着しにくいという、素晴らしい特性も持っています。これらの理由から、二次カリエスのリスクは、銀歯に比べて最も低いとされています。もちろん、非金属なので、金属アレルギーや、メタルタトゥー(歯茎の黒ずみ)の心配も一切ありません。
5. 徹底比較④:費用(保険適用と自費診療)と、長期的なコストパフォーマンス
最後に、避けては通れない「費用」の比較です。
- 銀歯 & コンポジットレジン どちらも、原則として「保険適用」です。患者様の窓口でのご負担は、治療費全体の3割(または1割など)で済みます。数千円程度の、安価な費用で治療を終えられること。これが、保険診療の最大の経済的メリットです。
- セラミック 原則として「保険適用外(自費診療)」となります。使用する材料や、精密な作製技術、高度な接着技術などにコストがかかるため、治療費は全額自己負担となり、高額になります。1本の詰め物(インレー)で数万円、被せ物(クラウン)で10万円以上かかるのが一般的です。これが、セラミック治療を選択する上での、最大の経済的デメリットです。
- 長期的なコストパフォーマンスという視点 「初期費用」だけを見れば、圧倒的に保険診療に軍配が上がります。しかし、ここで「長期的な視点」を持ってみてください。もし、保険の銀歯を選択し、数年後に、その隙間から二次カリエスになってしまった場合、どうなるでしょうか。銀歯を外し、さらに深く歯を削り、再び詰め物(あるいは、さらに大きな被せ物)を作り直す必要があります。その度に、治療費と時間がかかり、そして何より、あなたの大切な歯は、削られるたびに小さく、弱くなっていきます。 一方、セラミックは初期費用こそ高額ですが、その高い適合性と耐久性、むし歯の再発リスクの低さから、再治療の頻度を大幅に減らせる可能性があります。「治療を繰り返さないこと」こそが、生涯にわたってご自身の歯を守るための、最善の方法です。長期的に見れば、**「再治療のコスト(費用・時間・歯の寿命)」**を抑えられるセラミック治療が、結果として、高いコストパフォーマンスを発揮する、という考え方もできるのです。
6. まとめ:あなたにとっての「ベストな選択」とは
「銀歯」と「白い詰め物(コンポジットレジン、セラミック)」、それぞれの特徴と、メリット・デメリットについて、ご理解いただけましたでしょうか。
- 銀歯:【メリット】安価(保険適用)、丈夫(割れにくい)。【デメリット】見た目が悪い、むし歯の再発(二次カリエス)リスクが高い、金属アレルギーのリスク。
- コンポジットレジン:【メリット】安価(保険適用)、白い、1日で終わる、歯を削る量が少ない。【デメリット】耐久性が低い(すり減りやすい)、長年で変色する、適用範囲が限られる。
- セラミック:【メリット】見た目が非常に美しい、変色しない、耐久性が高い、むし歯の再発リスクが低い、金属アレルギーの心配がない。【デメリット】高価(自費診療)、稀に欠けるリスクがある。
結局、どれが「ベスト」な選択かは、患者様お一人おひとり、そして治療する歯1本1本によって異なります。 「とにかく費用を抑えたい」という方には、保険適用の銀歯やコンポジットレジンが第一選択になるでしょう。 「費用はかかっても、見た目の美しさと、将来の再治療リスクの低さを最優先したい」という方には、セラミック治療が、間違いなく最も満足度の高い選択となります。
大切なのは、これらの選択肢があることを知り、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解した上で、ご自身が「何を優先するか」という価値観に基づいて、納得して治療法を選択することです。 私たち、やまむら総合歯科矯正歯科では、決して特定の治療法を押し付けることはありません。患者様のお口の状態を正確に診断し、全ての選択肢を、公平な立場で、丁寧に、分かりやすくご説明することをお約束します。愛知県刈谷市で、むし歯治療の選択にお悩みの方は、どうぞお気軽に、私たちにご相談ください。あなたにとっての「ベストな選択」を、一緒に見つけていきましょう。